2020年初頭、誰もが予想だにしなかった事態が世界を襲った。
新型コロナウイルスの猛威は、多くの企業に存続の危機をもたらした。
特に対面サービスを主軸とする中小企業やスタートアップは、一夜にして顧客を失い、資金繰りの悪化に直面した。
「このままでは会社が持たない」—— 多くの経営者がそう感じた瞬間だ。
しかし、危機の中にこそ真のチャンスが潜んでいる。

本記事では、コロナ禍という未曽有の危機を逆手に取り、資金調達を成功させてビジネスモデルを大胆に転換し、むしろ成長を加速させた企業の実例を紹介する。
私が証券会社、経済メディア、ベンチャーキャピタルと三つの異なる視点から企業の成長と資金調達を見てきた経験を基に、その成功の秘訣を解き明かしていく。

あなたが今、厳しい経営環境に直面している経営者であれ、次のステージへの飛躍を模索する事業責任者であれ、この記事から得られる洞察は、ビジネスの転機を乗り越えるための道標となるだろう。
特に注目すべきは、単なる「資金繰り」としての資金調達ではなく、「成長への伴走者を得る」という視点でのファイナンス戦略だ。

「コロナは私たちからあらゆるものを奪ったが、一つだけ与えてくれたものがある。それは『ゼロから考える勇気』だ」
——カペシピ株式会社 山田太郎CEO(2021年インタビューより)

この記事を読み終える頃には、あなたも自社のビジネスモデル転換と成長加速のためのヒントを手にしているはずだ。

コロナ危機がもたらした転換への契機

世界を一変させたコロナショックは、多くの企業に苦難をもたらした一方で、ビジネスモデルを見直す稀有な機会ともなった。
東京都内の老舗飲食チェーン「美味厨房」の事例を見てみよう。
40年の歴史を持つ同社は、都心のビジネス街に20店舗を展開していたが、コロナ禍でオフィスワーカーが激減し、売上は前年比20%にまで落ち込んだ。
「毎日、資金繰り表と睨めっこする日々だった」と高橋社長は振り返る。
しかし、この危機が同社の大転換点となったのだ。

事業継続の危機と経営者の苦悩

コロナ禍初期、多くの企業が直面したのは急激な売上減少だった。
「美味厨房」の場合、月商1億円が突如2,000万円に落ち込み、固定費だけで3,000万円という厳しい状況に陥った。
現場からは「休業すべき」「スタッフの雇用をどうするのか」という声が日々上がっていた。
資金繰りの悪化は日に日に深刻さを増し、当座の運転資金すら確保が難しくなっていた。

高橋社長は当時をこう振り返る。
「最初は『いつか元に戻る』と考えていました。
しかし、一カ月、二カ月と経過する中で、『これは一時的な危機ではなく、社会構造そのものの変化なのではないか』という気づきがありました。
その瞬間、これまでの常識や前提をすべて捨て、ゼロベースで考え直す決断をしました」

この「常識を捨てる決断」こそが、後の成功への第一歩となった。

組織内部の動揺と再構築の必要性

危機は社員の間にも急速に不安を広げていった。
オンラインミーティングでは沈黙が増え、「次は自分が解雇されるのではないか」という恐怖から、自発的な提案や意見が減少していった。
士気の低下は目に見えて深刻化し、リモートワークへの急な移行も混乱に拍車をかけた。

このような状況下で、高橋社長が最初に着手したのは「新たな組織文化」の構築だった。
「週に一度、全社員が参加するオンライン朝礼を始めました。
そこでは、厳しい現状を隠さず共有する一方で、この危機をどう乗り越えるかについて、役職に関係なく全員がアイデアを出し合う場としました」

この取り組みが功を奏し、徐々に「受け身の姿勢」から「変革の主体」へと社員の意識が変化していった。

コロナ禍で求められたリーダーシップ

危機を好機に変えるためには、特別なリーダーシップが求められる。
高橋社長が採った意思決定プロセスには、三つの特徴があった。

1. 透明性の確保

  • 財務状況を含めた厳しい現実をすべて開示
  • 経営陣の報酬カットを率先して実施
  • 週次での経営状況アップデートの共有

2. 迅速な方向転換

  • 「元に戻る」という期待を早期に捨てる
  • 飲食店舗からデリバリー中心への転換を即断
  • クラウドキッチン構想への投資判断を3週間で実行

3. 希望の提示

  • 「コロナ後」ではなく「コロナ共存」時代のビジョン策定
  • 全社員の雇用維持を最優先課題として宣言
  • 「より強靭な企業への変革」という共通目標の設定

とりわけ重要だったのは、高橋社長自身の「メンタルモデル」の書き換えだった。
「これは一時的な嵐ではなく、気候そのものの変化なのだ」という認識への転換が、後の大胆な資金調達とビジネスモデル変革の原動力となったのである。

資金調達を成功に導いたポイント

資金調達は単なる「お金集め」ではない。
それは企業の成長ストーリーを投資家と共有し、ともに未来を創る「仲間探し」だ。
コロナ禍においてこの視点はさらに重要性を増した。
ここでは、「美味厨房」が1.5億円の資金調達に成功するまでの道のりを、ステップバイステップで解説していこう。

投資家を惹きつけるビジョンとストーリー

投資家が真に求めるのは、単なる収益計画ではない。
彼らが投資を決断する最大の理由は、「この経営者となら未来を創れる」という信頼感だ。
高橋社長は、最初の投資家面談でこう切り出した。

「私たちは単なる飲食店チェーンではありません。
40年かけて築き上げた『美味しさのノウハウ』を持つフードテック企業に生まれ変わろうとしています。
コロナは私たちから店舗という形を奪いましたが、本質的な強み—料理人の技術とレシピの宝庫—は奪えません」

このピッチでは、以下の要素を盛り込むことで投資家の心を掴んだ。

  1. 危機をチャンスに変える具体的なロードマップ
  2. 財務指標だけでなく、企業理念や存在意義を明確に示す
  3. 「なぜ自分がこの事業に命を懸けているのか」という個人的なストーリー
  4. 既存アセットの再定義と活用法の具体例

特に功を奏したのは、単なる「コロナ対策」ではなく、「コロナをきっかけに加速する社会変化への適応戦略」として提示したことだった。
投資家との信頼構築において決定的だったのは、最初の資金使途を「一人でも多くの従業員の雇用を守るため」と明言したことだった。
その誠実さが、投資家の心を動かしたのである。

具体的な調達スキームと交渉術

「美味厨房」の資金調達は、段階的に設計された。
緊急性と将来性のバランスを考慮したアプローチだ。

ステージ別の資金計画

  1. ブリッジラウンド(5,000万円)
  • 既存株主と日本政策金融公庫からの融資
  • 当面の運転資金と設備投資の頭金に充当
  • 調達期間:1ヶ月以内(スピード重視)
  1. シリーズA(1億円)
  • 事業会社(食品メーカー)からの戦略的投資
  • クラウドキッチン構築と配送システム開発に充当
  • 調達期間:3ヶ月(パートナーシップ重視)

この二段階方式により、緊急の資金ニーズに対応しながらも、戦略的パートナーとの関係構築に十分な時間を確保することができた。

投資契約時の交渉では、以下のポイントが重視された。

  • バリュエーション: コロナ前の売上をベースとした評価ではなく、将来の成長可能性に基づく評価を主張
  • 取締役席: 戦略的パートナーには議決権なしのオブザーバー席を提供し、経営の自由度を確保
  • マイルストーン: 全額一括ではなく、デリバリー売上達成度に応じた分割払い条件を受け入れ、投資家のリスク軽減に配慮

デューデリジェンスでは、コロナ禍特有の懸念点(テレワーク下での生産性、リモート対応の業務フロー、感染対策コスト)について、第三者専門家の評価を事前に取得することで、スムーズな審査を実現した。

不確実性をチャンスに変える実行力

資金調達に成功した企業に共通するのは、「待ちの姿勢」ではなく「攻めの姿勢」だ。
「美味厨房」では、資金調達と並行して以下の行動を素早く実行した。

  • コア従業員チームによる「コロナ対応タスクフォース」の即時設立
  • 毎朝の市場変化分析と週次での事業計画の更新サイクルの確立
  • 顧客との直接対話(オンラインアンケート)による新サービスの検証

いわゆる「虎の子」の使い方にも特徴があった。
多くの企業が緊急資金を人件費や家賃に充てる中、「美味厨房」は調達資金の30%を「未来への投資」として明確に区分け。
具体的には、デリバリー専用キッチンの開発とアプリ構築に充てた。
これが後の急成長の土台となった。

変化する市場ニーズを素早く捉えるため、2週間ごとのレビューサイクルを確立。
当初のデリバリー戦略から、より採算性の高い「ミールキット販売」「オンライン料理教室」へと素早く軸足を移していった。
この素早い意思決定と実行サイクルが、不確実性の高い環境下での差別化要因となったのである。

ビジネスモデル転換の実例

コロナ禍は多くの企業にとって存続の危機であると同時に、ビジネスモデルを根本から見直す契機となった。
「美味厨房」の事例を詳細に分析すると、成功したビジネスモデル転換には明確なパターンが存在することがわかる。
そのプロセスを掘り下げていこう。

新規事業立ち上げの背景

「美味厨房」がクラウドキッチンとデリバリーモデルへの転換を決断した背景には、複数の要因が絡み合っていた。

まず、従来のビジネスモデルには明確な限界が見えていた。
立地依存型の店舗展開は、コロナ禍でのオフィスワーカー減少により、収益の基盤そのものが崩壊していた。
また、店舗維持コストの高さが収益性を圧迫する構造的課題も長年存在していた。

新事業アイデアの発案は、意外なところから生まれた。
「社員全員参加のオンラインブレスト」で、入社2年目の調理補助スタッフが発した一言がきっかけだった。

「私の両親は地方に住んでいますが、東京のグルメを自宅で楽しみたいと常々言っています。
店舗がなくても、私たちの料理は届けられるのではないでしょうか」

この素朴な提案が、経営陣の目を開かせた。
当初は「オフィス街に依存しない新店舗展開」という保守的な案も検討されたが、財務分析の結果、従来型の店舗モデルでは、たとえコロナが終息しても収益性の回復は難しいという結論に至った。

社内外からの反対意見も少なくなかった。
「40年の歴史あるブランドを捨てるのか」「対面でのおもてなしこそが我々の強み」という声が特に古参社員から上がった。
こうした反対意見を乗り越えたのは、データによる説得と価値観の再定義だった。

高橋社長は全社集会で次のように語った。
「我々の真の価値は『店舗』ではなく『美味しさ』と『喜び』の提供にある。
その本質さえ守れば、形は変わってもいい」
この理念の再確認と共有が、組織の一致団結を可能にした。

既存資産の再活用とリソース配分

ビジネスモデル転換の成否を分けたのは、既存資産の巧みな再活用だった。
「美味厨房」は、以下のような隠れた強みを再発見し、新モデルの基盤とした。

再評価された既存資産

資産タイプ従来の活用法新たな活用法
レシピデータベース店舗での提供のみミールキット商品化、オンラインレシピ販売
熟練料理人の技術調理場での調理オンライン料理教室の講師、レシピ開発責任者
顧客データ来店促進キャンペーンパーソナライズされたミールキット提案
ブランド認知店舗集客のみECサイトの信頼性向上、プレミアム価格設定の正当化

一方、リソース配分も大胆に見直された。
本社オフィスの縮小、不採算店舗の早期閉鎖、広告予算のデジタルシフトなど、徹底した「選択と集中」が行われた。
特筆すべきは、人材の再配置だ。

店舗スタッフの30%がデリバリー運営やカスタマーサポートに転換。
料理人の20%がレシピ開発とオンラインコンテンツ制作に専念することとなった。
こうした人材の再配置には、2週間の集中研修プログラムが実施された。

このプロセスで最も困難だったのは、「何を捨てるか」の決断だった。
高橋社長は「事業の成功は、何を『やらないか』を決めることから始まる」という原則を掲げ、伝統的な接客サービスや一部の人気メニューでも、新モデルに適合しないものは思い切って中止した。
この潔さが、限られたリソースの効果的な活用を可能にした。

転換期を支えたチームビルディング

どれほど優れた戦略も、それを実行するのは人である。
「美味厨房」の転換を成功に導いたのは、危機をともに乗り越えようとするチームの結束力だった。

高橋社長のリーダーシップは、以下の3つの原則に支えられていた。

共感と透明性

日々変化する状況を正直に共有し、「我々はともにこの困難に立ち向かっている」という連帯感を醸成した。
毎週月曜の全体ミーティングでは、必ず財務状況を含めた現状が共有された。

個の尊重と貢献機会の創出

全社員に「自分ならどうするか」を考える機会を与え、アイデアの95%は現場から生まれた。
店舗マネージャーがECサイト責任者に、ベテラン料理人がコンテンツクリエイターになるなど、個人の強みを活かす新たな役割が創出された。

小さな成功の積み重ねと称賛

大きな目標を小さなマイルストーンに分解し、一つひとつの達成を全社で祝う文化を作った。
「最初のオンラインオーダー100件達成」「YouTubeチャンネル登録者1,000人突破」など、小さな勝利が次の成功への自信となった。

「共通ビジョン」の徹底共有も特筆すべき点だ。
「食を通じた喜びを、いつでもどこでも届ける」という新ビジョンは、すべての会議室と在宅勤務者のバーチャル背景にも掲げられた。
この一貫したメッセージが、混乱の中でも進むべき方向を明確にした。

事業推進体制も従来のピラミッド型から、機動的なスクワッド型へと改革された。
5〜7人の小チームが特定の課題に自律的に取り組む体制は、変化の激しい環境下での意思決定スピードを劇的に向上させた。

コロナ後を見据えた成長戦略

「危機は終わった」と思った瞬間に、次の危機が始まる。
コロナ禍での成功体験に胡坐をかくことなく、「美味厨房」は更なる成長ステージに向けた戦略を構築していった。
その視点は、過去の回復ではなく、未来の創造に向けられている。

市場環境の変化と機会創出

コロナ禍は消費者行動に不可逆的な変化をもたらした。
「美味厨房」のデータ分析チームは、以下のようなトレンドを特定した。

  • 週2〜3回の在宅勤務が定着し、昼食需要が住宅地にシフト
  • 食の「体験価値」への意識が高まり、単なる満腹感以上を求める傾向
  • デジタルとリアルを融合した「ハイブリッド消費」の定着
  • 健康・免疫増強への関心の高まりと、それに伴う食材選びの厳格化

これらの変化を機会に変えるため、「美味厨房」は以下の取り組みを開始した。

  1. 住宅密集地でのゴーストキッチン展開(23区内5カ所に新設)
  2. バーチャル料理教室とリアル食材のセット販売による体験価値の提供
  3. 顧客の健康状態やライフスタイルに合わせたパーソナライズド食事提案サービス
  4. 地方の名産品生産者とのコラボによる、全国の食材を活用したミールキット

さらに、海外展開も視野に入れた。
シンガポールの投資家との提携により、アジア富裕層向けの日本食ミールキット輸出プログラムを開始。
これにより、物理的な店舗展開なしに海外市場にリーチする道を開いた。

投資家とのパートナーシップも深化させている。
四半期ごとの戦略会議には主要投資家も参加し、業界動向や新たな機会について議論する場となっている。
単なる資金提供者ではなく、経営パートナーとしての関係構築により、次の資金調達への布石も打たれている。

事業拡大のリスク管理と組織文化

急成長には必ずリスクが伴う。
「美味厨房」は過去の危機から学び、以下のようなリスク管理体制を構築した。

デジタルビジネスのリスク対策

  • サイバーセキュリティ対策への投資(年間予算の8%を確保)
  • 顧客データの安全管理と適切な活用のためのガイドライン策定
  • システム障害時の代替手段の常時確保(オフライン注文システム等)

外部環境変化への対応

  • 複数のシナリオ(パンデミック再燃、経済後退、規制強化等)に基づくシミュレーション
  • キャッシュリザーブポリシーの強化(最低6ヶ月分の固定費を常時確保)
  • サプライチェーンの多様化(主要食材は必ず3社以上から調達)

特筆すべきは「失敗を許容する文化」の醸成だ。
高橋社長は「イノベーションの9割は失敗する」という前提を全社で共有し、四半期ごとに「ベストフェイラー賞」を設け、勇気ある挑戦を称える文化を作っている。
結果として、社員からの新規事業提案が前年比300%増加した。

「美味厨房」では、週に一度の「レッドチーム・ミーティング」も実施している。
このミーティングでは、現行戦略の問題点や盲点を徹底的に洗い出し、想定外の事態に備える習慣が根付いている。
こうした健全な危機意識が、安定と成長のバランスを可能にしている。

中長期的な企業価値向上のポイント

資金調達サイクルを継続するためには、経営指標の選定と達成が鍵となる。
「美味厨房」は、投資家との対話を通じて以下の重点指標を設定した。

1. 顧客生涯価値(LTV)の最大化

  • 顧客当たり年間購入回数:24回以上を目標
  • リピート率:月次80%以上の維持
  • 顧客紹介率:新規顧客の30%以上が既存顧客からの紹介

2. オペレーション効率の継続的改善

  • 食材廃棄率:5%以下(業界平均15%)
  • 配送時間:注文から40分以内(都内対象エリア)
  • 人件費率:売上の28%以内(業界平均35%)

3. 持続的成長への投資

  • 売上の15%をR&D(新メニュー開発、テクノロジー)に継続投資
  • 従業員教育に年間予算の5%を確保
  • サステナビリティ施策への段階的移行(パッケージの100%生分解素材化等)

これらの指標達成を前提とした5年成長計画は、次回の資金調達(シリーズB:5億円規程)の基盤となっている。

社会的課題解決と企業成長の両立も重視されている。
「美味厨房」では、以下の取り組みを開始した。

  • 地方の小規模生産者との直接取引による地域活性化(現在30生産者と提携)
  • フードロス削減プログラム(AI需要予測による廃棄率低減:前年比65%減)
  • 高齢者向け健康食宅配サービスの展開(地域包括ケアシステムとの連携)

これらの取り組みは、単なるCSR活動ではなく、事業モデルの中核に位置づけられている。
社会課題の解決が新たな顧客価値を創出し、競合との差別化を可能にするという好循環を生み出しているのだ。

まとめ

コロナ危機を乗り越えた「美味厨房」の事例から、我々は多くの示唆を得ることができる。
最後に、その核心となるポイントを整理しよう。

1. 危機はビジネスモデル転換の絶好の機会

  • 既存の常識や前提を捨て、ゼロベースで事業を再考する勇気
  • 「元に戻る」という幻想を早期に手放し、新たな現実に適応する決断力
  • 組織の一体感と透明なコミュニケーションがチェンジマネジメントの基盤

2. 成功する資金調達は「数字」と「物語」の融合

  • 投資家は単なる収益計画ではなく、共感できるビジョンとストーリーに投資する
  • 資金調達は「お金集め」ではなく「成長の伴走者探し」という視点の転換
  • 危機下での資金使途は「守り」と「攻め」のバランスが重要

3. ビジネスモデル転換は「捨てる勇気」から始まる

  • 既存資産の価値を再定義し、新たな文脈で活用する創造性
  • 「何をやらないか」を明確にすることで、限られたリソースを効果的に集中
  • 小さな成功体験の積み重ねが大きな変革を支える

4. 持続的成長は「次の危機」への準備から

  • 成功体験に安住せず、次の変化を先読みする習慣
  • 複数のリスクシナリオに基づく事前準備
  • 社会課題解決と事業成長を両立させる長期的視点

コロナ危機は多くのものを奪ったが、同時に「当たり前」を見直す貴重な機会を私たちに与えてくれた。
資金調達とビジネスモデル転換の本質とは、結局のところ「企業の存在意義」を問い直し、それを実現するための最適な形を探求することにほかならない。

この記事を読んでくださった経営者の皆さんへ。
「これからの時代に我々はなぜ存在するのか」という問いに真摯に向き合い、その答えを投資家や顧客、そして従業員と共有することができれば、どのような逆境も必ず乗り越えられるはずだ。
新たな可能性に向けた、最初の一歩を踏み出す勇気を持ってほしい。


Q&A:ビジネスモデル転換に関するよくある質問

Q1: 既存事業を残しながら新規モデルへ移行するタイミングはどう判断すればよいですか?

A1: 「美味厨房」の事例では、新旧の売上比率が「新20%:旧80%」になった時点で移行計画を開始し、「新40%:旧60%」で本格的なリソースシフトを実行しました。
重要なのは、単純な売上比率だけでなく、新モデルの成長率と旧モデルの衰退率を継続的に計測し、クロスする時期を予測することです。
また、旧モデルから新モデルへの顧客誘導がスムーズに行える仕組みを事前に構築しておくことも重要です。

Q2: 急激な事業転換に反対する社内の声にはどう対応すべきでしょうか?

A2: 反対意見は変革にとって貴重なフィードバックと捉えることが重要です。
「美味厨房」では、反対意見が強かった古参社員を「伝統価値保存委員会」のメンバーに任命し、新モデルにおいても大切にすべき企業文化や価値観を明文化する役割を与えました。
また、全ての決断に対して「なぜそうするのか」という理由を徹底的に説明し、感情面と理論面の両方に配慮したコミュニケーションを心がけました。

Q3: 投資家との良好な関係を維持するために最も重要なことは何ですか?

A3: 一言でいえば「期待値管理」です。
「美味厨房」のケースでは、月次の投資家アップデートで必ず「予想を上回った点」「予想通りだった点」「予想を下回った点」を率直に共有し、後者については既に着手している対策も伝えていました。
サプライズ(特に悪いサプライズ)を避けることが信頼関係の基盤です。
また、純粋な財務報告だけでなく、現場の生の声や顧客フィードバックなど、数字に現れない「事業の息吹」も共有することで、投資家の当事者意識を高める工夫も効果的でした。